消える落書き

かつて若者文化の中心だったあの繁華街の裏通り。あるいは、横浜や神戸を思わせる古くからの港町のシャッター街。

そこに時折、政治的なスローガンや奇妙な幾何学模様の落書きが現れます。しかし、その落書きは妙です。 通報される前に、必ず数時間で「専門の業者」によって完璧に消されるのです。自治体の仕事にしては早すぎますし、手際が良すぎます。

噂によれば、あれは「おとり捜査」。わざと過激な落書きを描き、それに反応する人間を見つけ出すための「罠」なのだと。 その落書きの写真を撮った者、SNSに投稿した者、あるいは前で立ち止まって熟読した者は、地域の不満分子として監視リストに加えられる…。

そして、やがて静かに社会から「調整」されるというのです。